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多様な味わい、焼酎の奥深さ
「焼酎の味は産地や製造元によって千差万別。不思議とどんな料理にもあい、自分に合った味を気軽に選ぶ楽しさもある」というのは、東京都江戸川区で酒店「酒のこばやし」を経営する小林昭二さん。同店では5年ほど前から焼酎に力を入れ始め、今では150種ほどの銘柄をそろえる。 焼酎の本場は九州・沖縄。中国生まれの蒸留酒が、東南アジアを経て14、5世紀ごろに沖縄に伝わって泡盛となり、さらに九州に上陸、焼酎に発展したとの説が有力だ。日本酒造組合中央会の村松賢一さんは「清酒は仕込み、貯蔵とも冷涼な気候が向いている。九州は温暖で清酒造りに適さないため、さまざまな材料で焼酎を造るようになったのでは」と話す。 材料は地域で特色がある。例えば鹿児島県や宮崎県南部ではサツマイモを原料としたイモ焼酎、熊本県は米焼酎、大分県は麦焼酎、奄美諸島は黒糖焼酎といった具合。それぞれ土地の特産物を材料にしており、「焼酎は地域に密着したお酒」(村松さん)というのがよくわかる。 酒税法では、清酒は「米」、ワイン(果実酒)は「果実」、ウイスキーは「発芽した穀類」と原料がはっきり定められている。これに対し、焼酎はアルコール度数と製法の違いで甲類と乙類(本格焼酎)を規定しているが、原料は他の酒と混同しないように「使ってはいけないもの」を定めているだけ。このため、最近ではニンジン焼酎、コーヒー焼酎、シイタケ焼酎などの新顔もお目見えしている。 「酒を発酵させる過程で麹(こうじ)菌というカビを使うことも、焼酎の種類が多い理由の1つかもしれない」。酒類総合研究所の須藤茂俊・酒類情報室主任研究員はこう指摘する。 お酒を造るにはアルコールのもとになる糖分が必要。この糖分を造る過程は酒によって異なる。ウイスキーやビールは、麦芽に含まれる酵素が麦芽内のでんぷんを糖に分解する。ワインはブドウ果汁の中にもとから糖分が含まれている。焼酎や清酒は、原材料に含まれるでんぷんを麹の働きで糖に分解する。麹という「道具」を使うため、理論上は原料はでんぷんさえ含んでいれば何でもいい。 発酵してできた酒を熱して蒸気にし、それを冷やして再び液体にして造るお酒を蒸留酒という。ウイスキーやブランデー、そして焼酎も蒸留酒だ。「焼酎独特の蒸留方法が、焼酎の味わいを多様にしている」という指摘もある。 ウイスキーやブランデーはもちろん、伝統的な焼酎は、常圧蒸留法と呼ばれる普通の気圧条件(1気圧)のもとで造られる。これに対し、1970年代初めに、外部条件を0.1気圧程度に下げて蒸留する減圧蒸留法が開発された。 低圧下で蒸留すると沸点が下がるため、アルコール以外の成分が混じりにくくなる。その結果、原料の持つ臭みが薄められ、すっきりした飲み口の焼酎ができあがる。米や麦焼酎で多く使われる減圧法に対し、「独特の甘みが好まれるため、イモ焼酎では材料の風味が残る常圧蒸留が主流」(国分酒造協業組合の笹山護さん)。ただ常圧式の米や麦焼酎、減圧式のイモ焼酎も存在し、飲み手の選択肢は広がっている。 ほかには蒸留後の熟成期間や貯蔵しておく樽(たる)の種類なども、焼酎の味を決める重要な要素という。日本国内の焼酎メーカーは約700社に上り、それぞれが個性を競っている。多種多様な材料、製法から、自分好みの1本を見つけるのも焼酎の楽しみ方の1つだ。 <てびき> 焼酎の飲み方の王道といえばお湯割り。小林さんによると、あらかじめ水(できれば軟水)で割って数日常温で寝かせた後、遠火でゆっくり温めるのがいい。飲みごろの温度は43-48度。その場で割るなら、70度ほどのお湯をついだグラスに後から同量の焼酎を注ぐのが作法だ。「電子レンジを使うのは焼酎の風味を壊してしまうので最悪」という。 焼酎好きなら一度飲んでみたいのが、「初垂れ」(はなたれ)。樽から最初に出てくる焼酎のことで、濃厚な味わいがする。蔵元の見学会などで飲める可能性がある。イモ焼酎なら秋がチャンスだ。 |